会社設立 > 会社設立の流れ > ⑪本店所在地

株式会社設立「定款」

本店所在地

本店所在地を決める


事業をスタートさせる場所選びは
様々な観点から慎重に選びましょう。


 

本店所在地とは?



会社の正式な住所を「本店所在地」といいます。

会社法で「本店」とは、本社機能を持つ場所ということではなく、
店舗でも、事務所でも、工場でも、代表取締役の自宅でもかまいません。

つまり、どこを本店所在地と定めて登記してもかまわないのですが(個人の本籍と似ています)、
株主名簿株主総会議事録などは「本店に」備え置かなければならず、株主などがこれらの閲覧請求をおこなう場所になりますし、
取引相手が、登記簿を見て請求書などを郵送することも考えられます。

ですから、本店所在地は、すくなくとも「事業の一部を実際に行っている場所」にする必要があります。


定款に定め、登記します



本店所在地は、必ず定款に定めて(絶対的記載事項といいます)、登記しなければなりません。

ただし、定款と登記では、次のような違いがあります。

「定款」の場合

最小行政単位まで定めればOK

(例)
東京都港区 など

町名や地番まで
定めてもよいです。

「登記」の場合

地番までの登記が必要です。

(例)
東京都港区○町○番地○号

ビル名や階数、部屋番号などは
登記してもしなくてもよいです。



一般的には、「定款」の場合は、最小行政単位(神奈川県横浜市など)まで定めます。
(同じ市内で引っ越す場合には、定款変更手続きが不要です。)
(登記するまでの間に、具体的な住所を決めて「登記」を行います。)

登記は、地番までが必要です。
ただ、ビルの階数や部屋番号まで登記するかどうかは自由ですので、
ビル内で引っ越す可能性がある場合などは、階や部屋番号の登記をしなければ、登記変更の手続きや費用の発生を防げます。
(ただし、郵送物が確実に届くように登記するようにしましょう。)

賃貸契約前などにあせって登記してしまって、契約できなかったときは「登記変更」が必要になり、3万円の費用が発生しますのでご注意ください。)


 

賃貸借契約において注意することは?


 
会社を設立する場合、まだ会社がない段階で賃貸借契約を結ぶことになりますので、
「個人」としてまず契約します。
(会社を設立すること、その事業のために賃借すること、どのような事業を行うか、などをきちんと説明します。)

そして、設立登記が終了した時点で、法人契約に切り替えます。


では、賃貸借契約をする上での注意点を確認して行きましょう。


物件用途の確認

新たにマンションなどを借りて事業を始める場合、
賃貸借契約上「事業目的で使用できるか」を確認しなければなりません。

「住居のみ」と定められている物件を、事業用に使用すると
賃貸借契約を解除される場合がありますので注意してください。

また、自宅としている賃貸マンションなどを事務所に使用する場合は
あらかじめ大家さんにその旨を説明し、協議しましょう。

これを怠ると、「用法順守義務」に違反するとして契約解除になり、
事業を続けることはもちろん、そこに住み続けることもできなくなりかねませんので
始めにきちんと手続きを踏んで行きましょう。


賃料の発生時期

通常は、賃貸借契約を締結する時から「賃料は発生」します。

ただし、あなたの事業計画によっては、具体的に開業するのは少し先、ということもあります。

この場合、「賃料の発生の時期」を「事業開始の時点」にすることができないか
契約をする時点でしっかり交渉しましょう。
(契約交渉をするときが大切です。契約を結んだ後で要望してもダメです。)


そのほか、契約時に確認・交渉すること

「いい物件があった」「すぐ契約したい」とあせって契約すると
これを言っておくべきだった、これは変更できないか、などと後で思っても
契約書により契約が成立した以上、それこそ「後の祭り」になってしまいます。

では、契約時にチェックしておく事項を見て行きましょう。

  • 定期借家契約
    「定期借家契約」とは、原則として「更新が認められない」契約です。

    たとえば2年の定期借家契約の場合、
    2年後にオーナーが「新たな契約を結ぶことをOKしなければ」物件から出て行かなければならなくなります。

    定期借家契約の場合、賃料が安く設定されていることが多いので、賃料につられて確認せずに契約を締結すると
    非常に不利になり、事業に大きな痛手を発生させることになりかねませんので
    「定期借家契約ではない」ことをきちんと確認しましょう。
  • 解約予告期間
    契約を解除する場合に、いつまでに通告しなければならないかという期間を「解約予告期間」といいます。
    この期間が長いと、機動的な事業展開の足かせになる場合があります。
    「3か月」「6か月」という予告期間である場合は、なるべく「短く」するよう交渉しましょう。
  • 原状回復費
    事業用の賃貸借では、退出時の「原状回復」負担が重く設定されていることが多くあります。
    借り手の負担がどのように設定されているか確認し、すこしでも軽減するよう交渉しましょう。
    また、工事業者を、オーナーが選択するか、借主が選択できるか、についても注意しましょう。
    (内装などで気になる点があれば、写真を取っておきましょう。)
  • 保証金
    保証金や敷金も、事業用では高額ですので、きちんとチェックし、交渉してみましょう。

その物件をどうしても押さえたいのか、条件によっては見合わせるのか、ということもありますし、
オーナーさんの考え方も千差万別です。

ですので、交渉方法も一概にこうすべきということはできませんが
締結前に、きちんと確認して、交渉できる点は交渉してみる、という姿勢が大切です。

《賃貸借に関する諸費用》

種類内容返還されるか
保証金契約内容の担保として支払う契約終了後、返還される
(返還されない場合もある)
権利金契約を締結する場合に支払うもの返還されないのが一般的
敷金家賃滞納分や必要な原状回復の担保として支払う契約に従った原状回復がなされれば返還される
礼金家主への謝礼金返還されない
仲介手数料不動産会社に支払うもの返還されない



物件の選び方


  
では、店舗、事務所、工場などをどこに構えて事業をスタートさせるか、物件の選び方を考えてみましょう。

広域で選択できる場合

事業をスタートさせる場所を比較的広く選択できる場合は
自治体のサービスを調査してみましょう。

例えば隣接するA市とB市で、
制度融資、中小企業融資などの制度や、助成金、行政サービスなどの面で大きな差がある場合もあります。

ネットなどで、気になる点で違いがないか、調べておきましょう。


店舗の選び方

飲食店や物販など、店舗を通じて直接顧客にモノやサービスを提供する事業の場合、
どこに店舗を構えるかは、売り上げに直結するかなり決定的な事業成否の要因となりえます。

飲食店の場合などは、内装に資金を要しますし、
移転となると、時間をかけてつくってきた固定客を失うことにもつながりますので
一度決めた場所で勝負しなければならない、と考えるべきでしょう。

店舗選びは、十分な時間をかけて調査しましょう。

  • 商圏の規模は十分か?
    (人口変動、年齢構成、所得構成は?今後の開発計画などは?ターゲットとなる人は十分に存在する?)
  • 人々の移動ルートは?
    (電車?バス?自家用車?徒歩?店舗候補の場所を何人が、どのような時間帯に通るのか?その年齢、性別は?)
  • 競合する店舗は?
    (商圏の大きさに比べて競合する店舗数は?どのようなものを、どのように、いくらで売っている?)

あなたの提供するサービス・商品の「強み」「独自性」などから考えて
その場所で、勝ち抜き、利益を上げ続けることができるか、イメージしながら調査しましょう。

また、特定の場所を最初から決め込むのではなく、
様々な地域で調査をして、複数の候補地から絞り込んで行くようにしましょう。

もちろん、立地で全てが決まるわけではありませんし
全てを満たす場所が存在することは「まれ」でしょう。

ただ、あなたが何を、どのように、どのような姿勢で提供するのかという「強み」と「独自性」を活かすために
「どこで始めるか」を考え、決めることはとても大切です。

 

物件を選ぶ場合のチェックポイント

では、店舗や事務所などの物件を選ぶ時のチェックポイントを考えてみましょう。

《立地とコスト》

  • 最寄駅、大型店舗の存在(駅前型、郊外型)、駐車場、公共施設、スーパーなどと物件の場所の関係
  • 賃料、更新料の有無、共益費、権利金など
  • 用途地域による制限(住宅専用地域など)、条例などによる制限は?、住民とのトラブルの例は?
  • 交通の便(物件前の人の流れ、取引先へのアクセス、自宅からのアクセス)

《施設と設備》

  • トイレ(男女別か?)、冷暖房設備(個別管理か?使用制限は?)、内装の自由度は?
  • 広さとバランスは?、商談スペースは?、窓やドアの配置は?
  • 電気容量は?、コンセントやアースの位置は?、
  • 携帯は使えるか?、インターネット環境は?(光ケーブル、CATV)
  • 24時間使用可能か?、土日の時間制限はあるか?

《契約》

  • 個人契約は可能か?、設立登記後に法人契約に移行できるか?

あなたの事業、提供する商品・サービスの特徴などから
「絶対に外せないポイント」「できればほしいポイント」を事前にリスト化して、物件を見に行きましょう。
(リストを見ながら、その場でメモを取りましょう。後で比較する時に、頭の中だけでは見落としが生じます。)

 

レンタルオフィスは?

1人または少人数で会社を立ち上げ、事務所を探す場合は
レンタルオフィスも選択肢に入れるといいでしょう。

敷金や礼金などがないだけでなく、賃料(使用料)が格安で、
FAX機・コピー機のレンタルも不要、机・椅子なども備え付けで、商談スペース(共用)があるなど
事務所開設に要する初期費用を1/5~1/10に抑え込むことができます。

レンタルオフィスを選ぶポイントは、「運営会社がしっかりした会社か?」をチェックすること。

セキュリティー、受付、入居事業者とのトラブルを未然に防ぐ体制などを備えた
しっかりした会社のレンタルオフィスであれば、起業において十分なクオリティーを提供してくれます。



物件選びから契約までの流れ



物件選びから契約までの流れを見ておきましょう。
 


事前準備

あなたの事業にとって、事務所や店舗を選ぶ「重要なポイント」は何か?
(リスト化し、「優先順位」や「絶対外せないポイント」を書きだす)
  ↓
リストを、さらに細かくチェックポイントをあげて、書き出す。



候補地選び

数か所の候補地をあげ、調査に入る。
「重要ポイント」を満たしているか?プラスポイント、マイナスポイントは?
  ↓
ネット調査と同時に、実際に何度も足を運び、不動産屋、商工会議所などから情報を収集する。



絞り込み

「重要ポイント」を満たし、マイナスポイントの少ない物件を
3件程度絞り込む。
  ↓
細かい「チェックリスト」のチェックを行い、
事業上のメリット、コスト、競合との関係、設備、などを総合判断する。



決定と契約

最優先とした物件について、契約前の交渉(条件面でのすり合わせ・要望)を行う。
(会社設立・事業内容についてを説明し、要望を伝える。)
  ↓
条件面での折り合いがついたら
設立前なので「個人契約を」結ぶ。



法人契約

会社設立手続きを行う。
(商号、本店所在地事業目的など登記)
  ↓
法人契約に切り替える。






株式会社設立の流れ 「ページご案内」