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合同会社と株式会社(メリットとデメリット)

急増している合同会社の設立数



会社を設立すると言ったときに、まず思い浮かべるのは「株式会社」でしょう。

ですが、2006年に施行された新会社法によってあらたに設定された「合同会社」という会社の種類での設立がここのところ急激に増えています。

「株式会社」と「合同会社」の設立件数の推移を見てみましょう。

株式会社と合同会社の設立件数の推移

(法務省・登記統計より、占部行政書士事務所で作図)

株式会社と合同会社の設立件数の比較



合同会社の設立
2010年から2014年のわずか3年間で、3倍近くに増加しています。
株式会社の設立数は微増、という感じです)

新規設立数は、株式会社は微増、「合同会社は急増」。


株式会社と合同会社の設立費用



ではなぜ、合同会社は急激に設立数が伸びているのでしょうか?

会社設立費用の違いを確認しておきましょう。

株式会社合同会社
定款の認証5万円不要
定款収入印紙代4万円4万円
登録免許税最低15万円最低6万円
合計最低24万円最低10万円



株式会社は、会社設立に最低24万円必要なのに対し、
合同会社は、最低10万円。

合同会社を設立する最大のメリットは「設立費用の安さ」にあります。

これが、合同会社の設立数が急激に伸びている最大の要因であると考えられます。

「設立費用の安さ」が、合同会社が伸びている理由。


株式会社と合同会社の比較



では、設立後の運営においても合同会社は優位性を持つところがあるのでしょうか?

まず、「株式会社」と「合同会社」の簡単な比較をしてみましょう。

株式会社合同会社
最低資本金額1円以上1円以上
出資者の数1人以上1人以上
出資者の呼称株主社員
利益配分出資額に応じて定款に定める
経営取締役1人以上業務執行社員
役員の任期原則2年
最大10年まで
規定なし
会社の代表者代表取締役代表社員
最高決定機関株主総会社員全員の同意
定款の認証必要不要
登録免許税最低15万円最低6万円



会社の仕組みが大きく違うことが確認できると思います。

たとえば、会社の最高意思決定機関は

株式会社は「株主総会
合同会社は「全社員による同意」

つまり、株式会社では、「出資額に応じた議決権による多数決」できめるのですが
合同会社では、「出資をした人=社員による1人1票制での同意」が必要、ということ。

株式会社は、出資者(株主)と経営の「分離」が前提ですが
合同会社は、出資者=経営者、という形です。

これは、会社の運営上大きな違いとなります。

では、会社を設立するなら「株式会社」と「合同会社」、どちらがよいのでしょう?
それぞれの特徴、設立した場合のメリット・デメリットを考えてみましょう。


合同会社」のメリット・デメリット



合同会社」の長所と短所を見ておきましょう。

《 合同会社のメリット・デメリット 》

合同会社
メリット
●設立費用が安い。
●決算の公告が必要ない。
●社員だけで、決定できる。
●役員の任期を定める必要がない。
●配当金を、出資額にかかわらず自由に決められる。
合同会社
デメリット
認知度が低く、イメージしにくい
閉鎖的な会社と認識される。
★代表者は、代表取締役と名乗れない
(代表社員、という呼称になります)
社員間で意見の相違があると、収拾がつかなくなる
増資が困難
★決算の公告がないため、取引不可とされることがある。


合同会社のメリット



合同会社を設立する最大のメリットは、設立費用の安さにあります。

合同会社の設立メリットを列記してみましょう。

  • 設立費用が安い。
    ⇒株式会社に比べて14万円も安く設立できます。
  • 決算の公告が必要ない。
    ⇒株式会社は、決算公告が法定義務で、官報では6万円かかります。
  • 社員だけで、決定できる。
    ⇒社員の1人1票制で決めて行けます。
    株主総会などはもちろん不要です。
  • 役員の任期を定める必要がない。
    ⇒任期がないため、登記変更費用がいらないということ。
  • 配当金を、出資額にかかわらず自由に決められる。
    ⇒配当は、社員の合意で、どのように決めてもかまいません。



つまり、合同会社とは
出資者=社員=経営者」という形であるため、

決算を公開する必要もなく、
決定は社員が自分たちで行えばよく、
任期という概念もない、
ということです。

非常に強固なつながりを持った少数者で経営する形合同会社
ということができます。

この「閉鎖性」が合同会社のメリットを生み、同時にデメリットの内容でもあります。

合同会社は、組織の「閉鎖性」がメリットを生む。


合同会社のデメリット



合同会社のデメリットを見て行きましょう。

★新しい会社形態であるため、認知度が低く、イメージしにくい
閉鎖的な会社と認識される。
★代表者は、代表取締役と名乗れない。(代表社員、という呼称になります)
社員間で意見の相違があった場合、収拾がつかなくなる
増資が困難
★決算の公告がないため、取引不可とされることがある。

これらは事業を発展させて行くことを考えるとき
とても大きなデメリットとなります。

合同会社は、増資が困難

たとえば、事業拡大のために増資をしようとしても
株式会社ではありませんので、
基本的に自己資金で行うしかありません。

または、新たに出資してくれる人に社員になってもらうという方法もありますが
1人1票制の社員を増やすことは、経営の不安定化をもたらします。
(社員間の意見の相違は、経営をとん挫させます)

また、増資には、登記が必要で、費用と手間がかかります。

会社法の上では
合同会社も、「社債の発行」をすることはできますが、
議決権もない、小さな合同会社の「社債」を買う人を見つけることは困難でしょう。

合同会社は、資金増強が困難。

合同会社は、経営の安定度が低い

合同会社は1人1票制ですので
複数の社員がいる場合、意見の対立が起こった時に収集が難しくなります。

人と人の話し合いで解決する以外にはなく、
株主総会が不要で、迅速な決定ができる」というメリットは、
「全員が納得しなければ何も決められない」というデメリットでもあるわけです。

合同会社は、社員間の意見対立の収拾がつけにくい。


取引先の新規開拓で困難を伴うケースもある。

「代表者が、代表取締役と名乗れない」
「よく知られていない会社形態」
「わかっている人・企業は、閉鎖的な会社という認識を持つ」
「決算公告がないため、新規取引しないとする場合もある」
など
合同会社は、資金調達面でも、新規の取引先開拓の面でも、デメリットを抱えます。

新規取引の可否判断に相手企業の調査を行う会社なら
業績調査ができない合同会社は「相手にしない」という場合があるわけです。

合同会社は、事業拡大する際のデメリットがある。


どのような場合に、合同会社のメリットが活かせる?



これまで見てきたとおり、事業発展を考える場合
合同会社はデメリットが多いと言えます。

メリットが活かせるのは、

  • 1人または家族などの絆を基盤とした少人数の社員に限定する。
  • 社員を増やすことを考えていない。
  • 事業規模を拡げることも考えていない。
  • 資金は自己資金の範囲で行う。

など、人数・事業規模を限定した経営を考える場合でしょう。

ですから、少人数で会社を立ち上げたとしても
将来事業を大きくして行きたいと考えている場合は
合同会社で本当にいいのか?きちんと考えるべきでしょう。


将来、株式会社に転換すればいい?



まず、合同会社ではじめて、事業が拡大したら株式会社にすればいい、
という考え方をする方もいるかもしれません。

もちろん、
会社法では、合同会社から株式会社への組織変更(転換)を認めていますので
できます。

けれども、合同会社のデメリットが感じられ、株式会社になろうと考えるということは、事業がある程度拡大していることを意味するでしょう。

この段階で、組織変更を行うのは、けっこう大変です。

登記変更と登録免許税(6万円)だけでなく、
組織変更の公告、
税務署、役場などへの一連の届出、
チラシ、パンフレット、名刺、封筒など様々な印刷物の入れ替え、
電話帳からホームページの書換、取引先へのあいさつなど
すべてをいったん作り直す作業が必要となり、相当な力仕事になります。

会社が大きくなったら「株式会社にすればいい」と簡単に考えることはできないのです。


合同会社の可能性



ここまで合同会社のデメリットをたくさん指摘してきました。

ただし、新しい企業の形が
合同会社から生まれる可能性がある
ということも考えられます。

合同会社は、人と人の結びつきを前提とした人的会社であり
株式会社のような、株式保有51%以上による支配権といった物的会社と違い
共通の目的に向かって行動するパートナーシップの概念が中心です。

ですから、仲間同士が、それぞれの得意分野を持ち寄って
共通の目的を実現するための形として活用することができるでしょう。

地域の活性化を目指して
特定のプロジェクトを目的に合同会社をつくるということもあるかもしれません。

つまり、縦系列の株式会社に対して
パートナー同士の横型組織として、これまでにない企業のあり方をつくりだすことができる可能性を秘めています。

これから、「フリーランスとスモールビジネス中心」「ヨコ関係中心社会」に時代が転換して行くことになります。

「お互いの技能と資金を持ち寄って」「プロジェクト型ビジネス」を立ち上げるときに
出資額に関係なく、みんなで方針を決め、利益分配も自由」な合同会社
使い勝手の良いスモールビジネスシステムとして活用の場が広がって行くでしょう。

また、最近では、大企業や外国企業が、日本国内で合同会社を設立するケースが目立っていますが、
初期投資が多大で、1社ではリスクが大きい分野で合弁企業として合同会社を立ち上げるケースや、産学連携や共同研究などの分野でも活用されています。

1社単独で投資するにはリスクがある基礎研究や商品開発などの場合に
数社が合同で、合同会社を立ち上げているわけです。

どちらにしても
合同会社のメリットデメリットをきちんと把握したうえで
なぜその形を選ぶのか、しっかり検討しましょう。

設立費用が安いから、で安易に選択すると
デメリットだけが大きくなりかねませんので。


株式会社のメリットを活かしましょう。



2006年に新会社法が施行され、「合同会社」という会社形態がつくられたのですが、
この新法の最も画期的なところは合同会社の設定ではなく
「株式会社」の自由化が行われたところにあります。

これまで株式会社は、
資本金は1,000万円以上、取締役3人以上で取締役会を設置し、監査役を置かなければならないなど
株式会社設立のハードルは極めて高く設定されていました。

新会社法で、これが一変しました。

1人で株式会社を作って、取締役は1人でOK。
資本金は1円でOK。

役員の任期も、機関の設計も、株主総会の開催運営も自由度がぐっと増しました。

株式に譲渡制限をかければ経営の安定を確保でき、
事業が拡大すれば株式上場するよう転換して行けばいいわけです。

小さく会社を設立して、
将来事業を拡大して行くのであれば
株式会社のメリットを最大限活用することができます。

けれども、
新会社法の施行後に会社設立数は増加しているのですが
その大部分が合同会社の増加、という現状。

合同会社、株式会社のメリットデメリットがどこにあるかについて十分伝わらないまま、
とりあえずの安さに流れている可能性があります。

自由度の増した会社法を活用すれば
小さくはじめて大きく育てるために
株式会社という形は大きなメリットをもたらしてくれます。





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